このコースはハイキング中級(日本では登山)に分類されます

ヘルンリ小屋に上がる最後の詰めは岩尾根の急登となり、鎖場と段差のある岩場が連続しますのでご注意下さい。日本で3000m級縦走(表銀座、後立山連峰など)を経験された方に向いたコースです。

アプローチ

マッターホルン・ゴッタルゴ鉄道のツェルマット駅を出て右に、お土産屋やホテルの立ち並ぶ目抜き通り Bahnhofstrasse を20分ほど延々と歩いて下さい。ねずみ返しの石土台に支えられた木造家屋を何軒か過ぎると川に合流し、やがて進行方向の左手(橋を渡った川岸)に大型エレベータがありますので乗車。上がって出たところがシュバルツゼーへ行くゴンドラ乗り場です。

窓口で往復チケットを購入すると磁気カードが渡されます。自動改札では左側のボードにカードをワンタッチして、反応音がしたらバーを押して進んで下さい。普通、ゴンドラ乗車のポイントといえば山頂駅で下りるのみですが、このゴンドラに限っては「シュバルツゼー」にて途中下車のため間違えやすいです。ゴンドラの途中駅は以下の通り。

ツェルマット – フーリ – 無人駅 – シュバルツゼー – トロッケナーシュテック

特筆すべき注意点として、時期や時間帯によってはフーリでゴンドラが途切れ、その上へ行くためにフーリでゴンドラ乗り換えが必要です。途切れた場合はフーリにて一度改札を出てから入り直します。その際の通路は一本道なので迷うことはありません。係員も常駐していますのでその指示に従ってください。シュバルツゼーはゴンドラの進む方角が90°折れる地点。到着するとドアが自動で開きますが、アナウンスはございません。ご注意下さい。

コース概要

標高2600mのシュバルツゼーは風の通り道となっており、風速15m/s以上の風が吹いていることがあります。ヘルンリ小屋は通常シュバルツゼーほど強風は吹きませんが、上記の通り登山道は岩尾根ですので、シュバルツゼーにて立っているのが辛いと思ったら即諦めましょう(ゴンドラは強風時でも運行することがあります)。ゴンドラを降りて改札を出たすぐ左手にはお手洗いの建物があり、使用可能。

歩き出してまもなく右手に現れる高山湖がシュバルツゼー。直訳すると「黒い湖」ですが、風がないと湖面にダンブランシュ 4357mが見事映える美しい湖です。湖畔に見える白壁の建物はキリスト教会で、人里離れた立地にも関わらず時折ミサが催される様子。湖畔を教会へ向かって下っていく広い道はフーリ、さらにツェルマットへ下っていくハイキングコースに続くので、荒天時や体調不良時の選択肢として良いでしょう。

遭難者を捜索するヘリ

午後荒れるマッターホルンと、遭難者を捜索するヘリ

ヘルンリ小屋へは正面に立ちはだかる丘をジグザグに上がる登山道に入ります。最初から登りで、飛ばしすぎると後に影響するのでご注意。本コースはマッターホルン登山の一般ルートをヘルンリ小屋まで辿るため、早朝に登頂し下山途中のクライマーのパーティと何度もすれ違い、その笑顔に疲れが癒されることでしょう。ちなみにマッターホルンのガイド登山スケジュールは、

前日の午後 ヘルンリ小屋へお客様自ら登ってチェックイン
前日の夕食 小屋の食堂で国際山岳ガイドと合流
午前3時頃 夜空の下アンザイレンしてアタック開始
午前7時台 マッターホルン山頂。下りは登りと同じ時間がかかる

となっており、早立ちのパーティは午前10時台に下りてくることも。太陽が昇るにつれて気温上昇に伴う落石や氷片落下、さらには雷の危険性が増すため、一定以上のペースで登擧できない(コンテでガイドについて行けない)人はガイド判断で断念を余儀なくされるシビアな世界。極力身軽にして一気に山頂アタックをかける「アルパインスタイル」は日本に浸透していないものの、スイスアルプスの4000m峰アタックでは天候が不安定ということもあって、一般的になっています。

一段登り切るとベンチがあり、シュバルツゼーが眼下に見渡せます。平坦地を通過しさらにもう一段登ると無人リフト駅(動いていない)があり、岩礫が転がった殺風景な広場に到着。Hörnlihütte と書かれた分岐の案内に従って先へ進みます。やがて道は右側の岩山に取り付いて斜上し始め、道が細くなって足元の高度感が増した頃に鉄組みの桟道と階段が登場。降雨の後歩くと滑りやすいです。階段が終わった地点から細いガレ場のトラバースが始まるため、団体ツアーとのすれ違いに難儀します。

シュバルツゼーを振り返る鉄の桟道
左:シュバルツゼーを振り返る 右:この先がガレ場のトラバース

ガレ場のトラバースは高度感からの恐怖心で立ち止まる方がいらっしゃいますが、常に崩れている落石多発地帯なので、足早の通過を心掛けてください。人とすれ違う際、一方(大体下りの人)が山側に避けて譲るルールは日本と同じです。無事通り抜けると九十九折れの急登となり、一汗かいたころ岩山の上に到着。

岩山の正体は、実はヘルンリ稜の末端。一汗かいて登り切った地点は下りの際、尾根から外れる下降点ということになりますので、風景や目印の看板を記憶しておきましょう。ヘルンリ稜に乗った後は約40分、緩やかな登りの砂地を歩くプロムナード。展望が大きく開け、真正面に迫りくるマッターホルンを望みながらの稜線漫歩です

ヘルンリ小屋へ至るルート

ヘルンリ小屋へ至る最後の詰め

マッターホルンの肩、海抜4000mに建つ豆粒のようなソルベイ避難小屋が確認できるようになり、よくあんな場所へ登るなあ…とため息もつかの間、ヘルンリ小屋へ突き上げる核心部の岩尾根にジグザグと人が張り付いています。平坦な稜線漫歩が終わると尾根自体の様相が一変し、本コースの核心である急な岩尾根に変化。ルート(踏み跡)を誤ってジグザグ道をショートカットしたり、残雪を迂回して突破せねばならない局面にて、3点支持で登る可能性はあります。また、残雪については標高が高いため、年によっては7月上旬まで残ります(写真は2012年6月27日)。総合的に考えて個人で行かれる場合、北アルプス夏山縦走など登山経験が欲しいところ。

残雪に半分没した鎖場スイス人ハイカー
左:核心部の鎖場 右:必死に頑張るスイス人ハイカー

ヘルンリ小屋の標高は3260m。小屋の入口にはバルコニーとテーブルがあり、裏手には別棟のお手洗いがあります。シーズン中、寝室はマッターホルンへの登頂を狙う人々(1日およそ100人)でほぼ予約満杯。なおヘルンリ小屋の食堂は宿泊客でなくても、満席でなければ予約を入れずに美味しいランチを楽しめます。小屋からマッターホルンに向かってさらに10分ほど登っていくと、マッターホルン本体への取付きロープを見ることが出来ますので、ぜひ足を運んでみて下さい。午前3時、ヘッドライトの灯りを頼りに、ロープを補助に使いつつ壁を登る人々を想像しましょう。

ひとくちメモ

  • ヘルンリ小屋の食堂は満席のことがあるので、食料持参が無難。尾根ルートのため、ヘルンリ小屋以外には水場がないことも念頭に。
  • シュバルツゼーからのゴンドラ下り最終は 16:30 前後と早いので注意。
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Grindelwald / グリンデルワルト

アイガーウォーク

放牧地
草原
鉄道
標高 2300m

Zermatt / ツェルマット

マッターホルン ヘルンリ小屋

高山帯
岩場あり
標高 3000m

ローテンボーデン~リッフェルベルク

高山帯
草原
鉄道
標高 2800m